『幸せな団らん』を持ち歩く?タイガーボトルのカラーに込める想いとは

水筒は、今や日常に欠かせない存在です。なかでも「色」は、選ぶ楽しさを左右する重要な要素のひとつ。タイガーでは、お客様の水筒の使用シーンを起点にカラーを設計しています。今回は、商品企画チームの高田(たかだ)とデザインチームの北島(きたじま)に、その裏側と色に込めた想いを聞きました。
目次
色は「選ぶ」のではなく、情景から「立ち上がる」もの

商品企画の段階では、「いつ」「どこで」「どんな風に使ってほしいのか」というコンセプトを設定し、その内容をデザインチームに共有していきます。「誰が使うのか」に加えて「どんなシーンで使うか」も重視して、合う色を選んでいます。
持ち歩きを想定したコンパクトなモデルでは、バッグの中で探しやすい明るめの色、オフィスで使える大きめのサイズは、空間になじみやすいベーシックな色といったように、使用シーンも鑑みて決めています。

デザインチームはプロダクトとカラーで部門が分かれており、私はカラーデザインを担当しています。商品企画チームからオファーがあった場合、まずプロダクトデザイナーが形を決め、その次に商品の形状やターゲット、使用シーンに合わせて色をデザインしていくという流れです。新商品と既存商品の新色を合わせると、年間10~20色ほどをリリースしています。
また、トレンドカラーも意識しています。コロナ禍では彩度を抑えたアースカラーが人気な印象でしたが、現在では行動の制限もなくなり気持ちも明るくなってきているのか、彩度と明度が高い、ポップでカラフルな水筒が選ばれるようになってきました。
ただ、トレンドだけで決めることはありません。商品のコンセプトに合っているかどうかを前提に、使用するシーンなどを踏まえて最終的に判断しています。
同じ色でも「質感」まで含めて与える印象を設計する

ボトルには表面に光沢感のあるものや、ザラザラしたマットな質感のものなど、さまざまな質感があります。現在は比較的マットな質感が主流になっていますが、使用シーンやボトルの形状に合わせて使い分けています。
例えば、スポーツやアウトドアシーンを想定した水筒は、手に持った時に滑りにくいよう、グリップ感のある粗目のビーズ調塗料を使用しています。ふたをねじって開けるスクリュータイプの水筒も同様です。一方で、上部のボタンで開閉できるワンプッシュタイプはグリップが必要ないので、クリアでつるつるとした塗料を使用しています。
2025年にカラーリングを一新した炭酸飲料対応ライン「MKB-T」シリーズは、市販の炭酸飲料やビールの缶のデザインに着想を得た、透明で光沢のある塗装を採用しています。

こうした質感にマッチする色味の再現は、実は難しいんです。というのも、色見本は我々で製作するのですが、見本を元に量産する工場はベトナムや中国など海外にあり、太陽光の関係で色の見え方が日本と全然違うんです。さらに、塗料は乾いてみないと実際の色味が確定しないため「赤を3%足して」といった数値での指示ができません。メールや電話で商品のコンセプトを細かく説明しながら、何度も試作を繰り返して調色しています。
「MKB-T」シリーズのボトルの色表現は、特に困難を極めました。ステンレスの質感を最大限に活かすために透明塗料を採用したため、彩度を表現するのが難しく、塗膜のムラが生じやすくなってしまいました。 パール系や不透明な塗料であれば、「色相」「明度」「彩度」という3つの軸に基づいて色を指定できますが、透明やパール系の塗料の場合、「濃度」「質感」「パールの量」といった要素も加わり、指定項目が増えます。濃度を上げると色相が変わってしまうこともあるため、調色には高度な技術が求められます。
ボトルの「形」が色を呼ぶ。形状ごとの最適解

ボトルの形状も、色を決める際の重要な要素です。シンプルなスクリュータイプとボタンがついているワンプッシュタイプでは、似合う色が少し違うんです。タイガーのボトルはスタイリッシュなデザインのものが多いので、「形を邪魔しない色」であることを常に考えています。
例えば、スポーツ中でも手軽に水分補給ができるプッシュボタン式の「MTA-H」シリーズは、キャップと底部が濃いグレーになっているため、ボタン部分にはオレンジをアクセントカラーとして採用しています。ランニングシューズやスポーツウェアのデザインに着想を得て、視認性の高い色を大胆なアクセントとして取り入れました。
さまざまなニーズに応えられるよう、最初の段階では10パターンほどの案を出します。インパクトのある配色を試すこともありますが、やはり形に合わないと違和感が生まれますね。
例えば、サイズが大きい商品にパステルカラーを塗ると膨張して見えてしまうのですが、コンパクトな商品に使うとマッチします。個人的にはブラウン系の商品を出したいと思いつつなかなか商品化に至っていないので、いつか何かの形で実現したいですね。

アウトドア志向の「MCZ-G」シリーズでは、ハンドルからキャップにかけてのエリアを黒で統一しているため、コントラストを出すべく、本体にはあえて鮮やかな色を採用しています。また、カラーネームには「美しい砂浜の保護」、「土壌汚染対策」、「絶滅危惧種の保護」といった地球環境に関連するテーマを設定し、アウトドアのシーンと自然に調和するようにしました。
さらに、他社にはない「TIGERらしさ」を引き出す色彩づくりを、私たちは非常に重視しています。例えば、真空断熱フードジャー「MKL-W」では、テラコッタ調のオレンジ色を採用した「Vermilion」という大胆なカラーパターンをラインナップに加えました。これは、食器やテーブルコーディネートにヒントを得て、料理をより食欲をそそるものに見せる色彩という観点から選んだものです。 選択肢の中に際立って鮮やかな色があることは、TIGERの大きな特徴だとよく言われます。
お客様の声から生まれるカラーバリエーション
ボトルは常に持ち歩くものだからこそ、お客様の好みが反映されると思うんです。そのため、お客様の声も大いに参考にしています。
例えばコンパクトな0.2Lサイズの水筒は、ご高齢のお客様がお散歩する際に持ち歩いたり、お薬を飲むのに使ったりしているという事がお客様アンケートから見えてきました。そのためバッグの中で見つけやすいよう、明るめのイエローやビビッドなブルーを採用したこともあります。「気分が上がっていい」というお声をいただく一方、「少し派手過ぎる」というご意見もあり、現在は落ち着いたカラーも展開しています。100点満点を実現する難しさを日々感じていますね。
最近では白ひとつとっても、わずかにグレーがかった白やベージュに近い白など、ニュアンスのある色が好まれる傾向にあるようです。お客様の好みもトレンドに合わせて変化してきているので、その都度キャッチアップしていくようにしています。以前は既存商品のカラーチェンジは年1回程度でしたが、トレンドの変化がスピーディになっているので、リクエストがあれば最短で反映するようになっています。
ボトルが支える日常と、その先にある「幸せな団らん」

当社が目指す「幸せな団らん」を実現するために意識しているのは、やはりお客様にどれだけ寄り添えるかという点です。「こんな方に、こういうシーンで、こうやって使っていただくのならこの色じゃないか」という観点を第一に考えています。商品を手に取ってくださったお客様が、「持っているだけで気持ちが高まる」「持っていない色だったのでこれに決めた」とアンケートに書いてくださると、色の持つ力を実感できてとても嬉しいですね。
「今日のバッグは小さいからコンパクトなボトルにしよう」「1日中外にいるから大きめのものを持っていこう」など、その日の気分や持ち物に合わせて選べるよう、サイズ違いや色違いで揃えていただくのもおすすめです。洋服を選ぶように、楽しく手に取っていただけたらと思います。

時代に合わせたデザイン設計も意識しています。例えば、一昔前の子ども用の水筒と言えば、キャラクターやイラストが描かれていて、ストラップがついているものが主流でしたよね。しかし現代は、大人も使えるようなスタイリッシュなデザインなデザインを選ぶ小学生も増えていて、そういった変化も踏まえたカラー展開を取り入れています。また、熱中症予防に多めに水分を持たせるという習慣がついたためか、お子さま用でも大きめのサイズが選ばれるようになってきました。
新しくボトルを選ぶ際は、ぜひ実物を手に取って「軽さ」や「使いやすさ」を実感していただきたいと思います。毎日持ち歩くものだからこそ、わずかな重さもストレスになり、次第に使わなくなってしまいがちです。ご自身のライフスタイルや手荷物とのバランスに合わせて、長く愛用できる1本を選んでいただければ幸いです。

プロフィール
高田 愛子 / たかだ あいこ
タイガー魔法瓶株式会社 商品企画チーム 魔法瓶群企画担当

プロフィール
北島 彰子 / きたじま あきこ
タイガー魔法瓶株式会社 ソリューショングループ デザインチーム